胃カメラとバリウム検査はどちらが良い?

Medical 胃カメラとバリウム検査はどちらが良い?

MEDICALバリウム検査とは

バリウム検査とは、バリウムというX線(レントゲン)撮影をすると白く鮮明に映る造影剤と発泡錠(胃を膨らませる薬)を飲み込んで、胃の表面に薄く付着したバリウムから、胃の形や粘膜の輪郭、凹凸具合を撮影する検査です。バリウム検査は「胃透視検査」や「胃X線検査」とも呼ばれます。

胃の全体像の把握が可能

バリウム検査は、胃の表面全体にバリウムを行き渡らせた状態でX線撮影をするため、胃の全体の形状と胃の動きを観察することができます。
一方内視鏡検査では、一度に確認できる範囲はカメラが映し出す範囲のみであるため、胃の形状の異常や胃の動きの異常には気づくことが難しいです。バリウム検査は胃の全体像や胃の動きを把握するには最適な検査であるため、手術の前などに行われることが多いです。

胃バリウム検査は指示に従って体を回転させる必要がある

バリウム検査では、胃全体にバリウムを付着させる必要があるため、撮影技師の指示のもと検査台の上で寝ころんで体を回転させる必要があります。
そのため、ご高齢の方や手足が不自由で体を回転させることが困難な方、耳が聞こえにくく指示が伝わりづらい方には難しい検査となります。一方、胃カメラ検査は、左側を向いた横向きの状態で寝ていれば検査が終了するため、体を動かす必要はありません。

げっぷ(噯気:あいき)の我慢

バリウム検査の際には「げっぷ」を我慢するように言われます。胃がパンパンの状態で腹筋を使って体を回転させるため、「げっぷ」を止めるのが難しい場合もありますが、「げっぷ」をしてしまうと一度検査を休止して、再度発泡剤を飲んでいただく必要が生じます。
一方、胃カメラ検査では、胃の空気量をスコープから調整することができるため、「げっぷ」を我慢する必要はありません。

バリウムによる腸閉塞のリスク

バリウムを飲んだ後は、下剤を飲み、バリウムを体の外に出し切る必要があります。
バリウムが腸内に溜まってしまうと、腸内の水分が吸収されすぎて、便が硬くなり腸閉塞(腸の詰まり)や腸穿孔(腸に穴が開くこと)を起こすリスクがあり、外科手術で腸を切除しなくてはならなくなることもあります。

放射線被ばく

バリウム検査では、放射線を使用するため、人体に影響がない被ばく量ですが放射線被ばくします。国立がん研究センターによると、バリウム検査での被ばく量は3.7~4.9mSvで、これは胸の単純撮影の約200倍の被ばく量です。

検査後に下剤を飲まなければならない

バリウム検査後は、バリウムを体外に出し切る必要があるため、検査後に下剤を飲む必要があります。
下剤の服用後は頻繁にトイレに行く必要があるため、行動が制限されます。また、バリウムを含む便は流れにくいため、処理をするのが大変なこともあります。

胃液が多いと検査精度が下がる

胃内に胃液が多い場合には、バリウムが薄まってしまうため、検査の精度が低くなります。濃度の高いバリウムを用いて検査しますが、バリウムが薄まると鮮明に撮影ができません。

バリウム検査で異常が発見された場合は、結局胃カメラ検査が必要になる

バリウム検査は、胃の粘膜の輪郭を映し出す検査であるため、異常の発見はできるものの、その異常が何の病変なのかまでは正確に判断できません。そのため、バリウム検査で異常が見つかった場合は、結局胃カメラ検査を行って組織を採取し、病理検査を行う必要があります。

胃がんの発見率に違いがある

胃がんの発見率は、バリウム検査よりも胃カメラ検査の方が高く、胃カメラ検査における胃がんの発見率はバリウム検査の2.5倍とされています。
バリウム検査では造影剤を用いて間接的に粘膜の形態を把握するのに対し、胃カメラ検査では粘膜の形態だけでなく、病変の色合いや空気量の調整による変形具合などを直接観察することができるため、特に早期胃がんの発見率が高くなります。

スキルス性胃がんの発見は内視鏡検査よりも得意

バリウム検査は、「スキルス性胃がん」の発見においては、胃カメラ検査よりも優れています。
スキルス性胃がんは、胃の壁が硬く・厚くなる進行胃がんで、がん細胞が粘膜の下に隠れることで胃粘膜表面にはっきりとした凹みや盛り上がりが出ないため、胃カメラ検査では見つかりにくい疾患の1つです。
バリウム検査では、胃の断面写真が撮れるため、胃壁の厚みを見ることができ、他の部位と見比べられるため、厚みの異常があればすぐに発見することができます。
比較的発見が難しいとされるスキルス性胃がんですが、当院では豊富な経験をもつ内視鏡専門医と、最先端の内視鏡機器を用いた検査により、バリウム検査以上に早期発見ができるよう努めています。安心して胃カメラ検査をご選択ください。

MEDICAL胃カメラ検査とは

胃カメラ検査とは、先端にカメラが付いたスコープを、口または鼻から挿入し、食道や胃、十二指腸をリアルタイムに観察する検査です。粘膜を直接観察することができると同時に、疑わしい病変が発見された場合は、その組織を採取して病理検査にまわすことが可能です。
また、観察のみならず、胃や十二指腸潰瘍などから出血が見られた際にはクリップを使って止血処置を行ったり、アニサキス(寄生虫)などの異物を発見した場合、取り除くことも可能です。胃カメラ検査は、「上部消化管内視鏡検査」や「胃内視鏡検査」とも呼びます。

嘔吐反射による出血

嘔吐反射(えずき)を繰り返すと、食道に強い圧力が加わり、食道と胃のつなぎ目の粘膜が裂けて出血を起こします(マロリーワイス症候群)。経口内視鏡検査では、嘔吐反射が起こりやすく、マロリーワイス症候群が起こる可能性があります。
しかし、検査中に出血したとしても小さな傷であれば、自然と回復しますし、大きな傷ができた場合も、内視鏡検査中であればすぐに止血処置を行うことができます。心配な方は、鎮静剤を使用すれば、嘔吐反射を起こさずに検査をすることが可能であるため、鎮静剤を使用した経口内視鏡検査を受けることをお勧めします。

交通手段に制限がかかる可能性がある

鎮静剤を使用する胃カメラ検査を受けられた場合は、終日車やバイク、自転車の運転はできません。鎮静剤を使用すると、検査が終わり数時間がたっても急に意識がぼーっとする可能性があります。検査日当日は、ご家族などの送迎や公共交通機関を利用してお越しください。

被ばくの影響がない

胃カメラ検査では、放射線や電磁波を用いないため、バリウム検査のように被ばくすることはありません。

食道がんの発見率が高い

胃カメラ検査は、食道がんの発見が得意です。胃カメラ検査の特殊な観察モードであるIEE(画像強調内視鏡)を用いることで食道がんの発見率が高くなります。
食道がんは数年前までは、早期発見が難しいとされるがんでしたが、内視鏡機器の技術の進歩によって早期発見ができるようになりました。バリウム検査では、食道にバリウムを付着させることが難しいことから、食道がんを見つけるのは困難です。

胃カメラ検査では直接胃の中を観察できる

胃カメラ検査では、スコープの先端に内蔵したCCDカメラを用いて、胃の中をリアルタイムに観察するため、がんやポリープを直接発見することができ、病変から組織を採取し病理検査を行うことで、最終的な確定診断を行うことが可能です。

胃粘膜の凹凸・形状・色まで確認できる

胃カメラ検査では、胃粘膜の凹凸・形状に加えて、粘膜の色も確認することができるため、バリウム検査よりも得られる情報量が多いという特徴があります。
胃粘膜が炎症を起こしていると、粘膜が赤くなったり、早期のがんは病変が白色であったりと、色の情報がわかると、多くの疾患が発見しやすくなります。

胃カメラによる特殊検査

胃カメラ検査では、通常の画像観察に加えて、「IEE(画像強調内視鏡)」や「拡大内視鏡検査」などの特殊な検査を行うことができます。IEEは、内視鏡スコープから特殊な波長の光を照射することで血管や粘膜を観察しやすくする最新の技術です。
IEEを使用することで、早期がんの発見率や診断精度が向上します。オリンパス社の「NBI」や富士フイルム社の「FICE」などがIEEと呼ばれるものです。
また、拡大内視鏡検査は、拡大内視鏡機能が付いた内視鏡スコープを用いて行う内視鏡検査で、早期がんを疑う小さな病変を見つけた際に、それが腫瘍か炎症かを診断するのに非常に有用です。

経鼻と経口を選択できる

胃カメラ検査では、経口内視鏡検査と経鼻内視鏡検査のどちらかを選択していただけます。
経鼻内視鏡には拡大機能がついていないという特徴があります。胃の中を詳細に観察したい場合は経口内視鏡検査がお勧めです。

気になった部位の生検が可能

胃カメラ検査中に、病変が疑われる部位を発見した場合は、その場で組織を採取し病理検査に出すことができます。
病理検査は検査の約7~10日後に結果がわかります。病変の発見から結果が出るまでがスピーディーであるため、早期発見・早期治療につながります。

胃カメラでは鎮静剤を用いることで楽に検査が可能

経口内視鏡検査は鎮静剤を使用することで、楽に検査を終えることができます。経鼻内視鏡検査は鎮静剤を用いなくても楽に行えますが、経口内視鏡検査の方が詳細な観察が行えるためお勧めです。

MEDICAL医師はバリウム検査を受けるのか?

医師を含む医療従事者は、バリウム検査を受けることはほとんどないとされています。その理由は、バリウム検査で異常が発見された場合は結局2次精査として胃カメラ検査を受ける必要が生じるからです。バリウム検査と胃カメラ検査で迷っている方には胃カメラ検査をお勧めします。

MEDICAL胃カメラ検査に抵抗のある方へ

過去の胃カメラ検査が非常につらいものであったため、胃カメラ検査を避けている方もいると思いますが、現在は鎮静剤を用いたり、経鼻内視鏡検査を選ぶことで苦痛をほとんど感じることなく胃カメラ検査を行えるようになりました。
経鼻内視鏡検査では、鼻から非常に細い内視鏡スコープを挿入するため、嘔吐反射を減らすことができますが、中には経鼻内視鏡検査でも嘔吐反射が出る方もいます。最も楽に行える検査方法は鎮静剤を用いた経口内視鏡検査です。
鎮静剤を用いた胃カメラ検査では、苦痛を感じることなく眠っている間に検査が終わりますので安心して検査をお受けください当院では、初めての方でも安心して胃カメラ検査を受けていただけるよう、丁寧にサポートいたします。胃カメラ検査について不安な点や疑問がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

監修医師 安江 千尋

安江 千尋

院長資格

専門医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
指導医
  • 日本消化器内視鏡学会指導医

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本大腸肛門病学会
  • 日本消化管学会
院長紹介
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