大腸カメラで使用する下剤の種類

Medical 大腸カメラで使用する下剤の種類

MEDICAL下剤とは

下剤とは、便秘を解消したり、腸内をきれいにするために使われる医薬品のことです。大腸カメラ検査の前には、大腸内を洗浄し腸内の内容物を排除する目的で下剤を服用します。
大腸内を洗浄することで大腸内の様子を鮮明に観察することができ、検査の精度が向上します。
当院では、患者様それぞれに適した下剤を提供し、患者様の下剤に対する不安を軽減する工夫をしています。

下剤を選択する際のポイント

下剤は、味が独特であり、患者様によっては下剤の味が苦手で大腸カメラ検査を懸念している方もいます。

飲む量

下剤の飲む量は、下剤の種類によっても異なりますが、基本的には1~2リットル程度となります。また、便の状態によっては、下剤を追加投与する場合もあります。

洗浄力

下剤の洗浄力は、大腸カメラ検査を正確に行うために最も重要な要素です。
洗浄力が弱い下剤を選択すると、腸の洗浄が不十分になり、せっかく下剤を服用したのにもかかわらず大腸カメラ検査を受けられない場合があります。

飲み方

下剤の飲み方は、下剤の種類によって異なります。水と並行しながら服用する下剤や、作り方が複雑な下剤、すでに配合が完成している下剤をただ飲むだけのものなど、様々な飲み方があります。

MEDICAL当院で取り揃えている下剤

マグコロールP:味が良いと評判の下剤

マグコロールPは、液体状の下剤で、洗浄力がやや弱いものの、味がポカリスエットのような味で飲みやすい下剤です。服用量は約1.8Lです。どうしても他の下剤が飲めない時などに使用している下剤です。
しかし、腎臓機能が低下している患者様には服用していただけないという特徴があります。

モビプレップ:オールマイティーに優れた下剤

モビプレップは、液体状の下剤で、洗浄力が高く、味はややすっぱい濃いめの味(梅ジュースに近い印象)がする下剤です。服用量は約1.5Lであり、他の下剤と比べると下剤服用量が少なく、洗浄が短時間で行えるという特徴があります。
比較的新しい下剤で、洗浄力・服用量・味ともにバランスが良いため現在は広く使用されています。
下剤の濃度が濃いため、下剤の服用量の半分の水分補給を並行して行う必要があります。当院で最も使用する腸管洗浄液です。ただし、高齢者や腎機能が低下している方には不向きとされています。

ニフレック:腎機能が低下している患者様や高齢者にもお飲みいただける下剤

ニフレックは、飲み方が簡単で、比較的洗浄力も高めですが、塩味があり他の下剤よりはやや飲みづらい味(スポーツドリンクの甘味をなくしたような味)のする下剤です。
モビプレップが発売されるまでは、多くの施設で使われていました。ニフレックは飲んでも体内にほとんど吸収されず、電解質への影響がないため、腎機能が低下している患者様にも使用でき、マグコロールPの代替として処方されることが多いです。腎機能が低下している方や高齢者の方にお勧めの下剤です。

ビジクリア:液体状の下剤を飲みたくない患者様にお勧めの下剤

ビジクリアは、唯一の錠剤の下剤です。液体状の下剤を飲まなくてよいというメリットがあるものの、50錠の錠剤を服用する必要があるため、どうしても液体状の下剤を服用したくない患者様にのみ提案しています。
1回5錠を200mlの水で飲み、15分ごとに内服し、計10回繰り返します。高血圧のある高齢者や、腎臓や心臓に病気のある方には使用できません。

ピコプレップ:飲む量が少ない下剤

ピコプレップは、液体状の下剤で、検査前日の夜と検査当日の朝起きてからの2回に分けて150mLずつを服用するという飲み方の特徴があります。
しかし、ただ下剤を服用するだけでは大腸が綺麗に洗浄されないため、下剤と並行して合計2L以上の水分を摂っていただく必要があります(透明な飲み物)。
味がオレンジジュース風味のため、飲みやすいのも特徴です。ただし、洗浄力が弱いというデメリットがあり、頑固な便秘の方にはお勧めしておりません。仕事などで帰宅が遅いという方にも向いていません。

サルプレップ:味がよく、飲む量も少なめの新しい下剤

サルプレップは、液体状の下剤で、洗浄力が高く、レモン風味の飲みやすい味である下剤です(人によっては苦みを感じることも)。下剤自体の服用量が480~960mlと少ないものの多くの水(服用した下剤の量の倍量)を飲む必要があり、服用方法がやや複雑であるという特徴があります。約半数の人はサルプレップ480mlと水分1Lを服用した時点で検査が可能になります。
サルプレップは、他の下剤と比較してスペックが高く、今後の下剤の主流になると期待されています。2021年5月に日本製薬株式会社から発売された比較的新しい下剤です。腎機能が低下している方には服用していただけません。

MEDICAL下剤の比較

下剤の種類 服用量 洗浄力
マグコロールP スポーツ飲料系の味 洗浄液1,800~2,400mL
モビプレップ やや酸っぱくて濃いめの梅味風味 洗浄液1,000~2,000mL+
水分500~1,000mL
ニフレック 軽い塩味風味 洗浄液2,000~4,000mL
ビジクリア 50錠+水分2,000mL
ピコプレップ オレンジジュース風味 前日: 洗浄液150mL+
水分1,250mL
当日: 洗浄液150mL+
水分750mL
サルプレップ レモン風味 洗浄液480~960mL+
水分1,000~2,000mL

MEDICAL楽に下剤を服用する方法はある?

大腸カメラ検査の3日前から食事に気を付ける

大腸カメラ検査を受ける3日程前から消化の良い食べ物を摂るようにしましょう。消化の良い食事をすることで、下剤の効果が高くなります。食事には、消化によく、食物繊維が少なく、脂質が少ないものがよく、煮込んだ野菜や白身魚などがお勧めです。揚げ物や香辛料、食物繊維が多い野菜、海藻類、お肉の脂肪などは避けましょう。
普段と異なる食事を用意するのが大変な場合は、大腸検査食を食べるのがお勧めです。江崎グリコから発売している「エニマクリンeコロン」は1,200円で朝昼夕の3食がセットになっています。当院でも販売しているため、ぜひお試しください。

便秘気味の方は1週間前から準備をする

便秘気味の方は、検査の1週間前から準備を始める必要があります。便秘があると下剤の効果が弱くなることが多いため、検査当日にスムーズな下剤の効果を得るためには、1週間前から下剤を毎日服用していただくことが推奨されます。
1週間前から服用していただく下剤として、酸化マグネシウムやプルゼニド(センナ系)などが効果的です。これらの下剤はドラッグストアでも市販されています。ただし、腎臓に疾患がある方は、酸化マグネシウムを使用できない場合があるため、注意が必要です。
また、便秘がひどい場合や腸閉塞の疑いがある場合、安易に下剤を服用することで腸管破裂を引き起こす可能性があります。このような場合は必ず医師に相談してください。さらに、以前の大腸検査で下剤の効果が不十分だった方も、事前に医師に相談することをお勧めします。

下剤の飲み方を工夫する

下剤は、冷やしたり、ストローを使って飲むことで飲みやすくなります。ただし、冬期はあまり冷やすと身体に負担がかかるため気をつけましょう。
下剤の味が苦手な場合は、ストローで喉の奥に下剤を送り込むことで、味を強く感じないため、お勧めです。下剤が苦手な方は一度お試しください。また、どうしても下剤が服用できない方には「下剤を飲まない大腸カメラ」のオプションも用意しておりますので、ご希望ある方はご相談ください。

快適な下剤服用のための院内下剤

下剤の服用は自宅と院内のどちらが良いか
診察内容 メリット デメリット
自宅服用
  • 慣れた環境で自分のペースで下剤を服用できる
  • 早朝大腸カメラに対応可能
  • 周りの人を気にせずリラックスして下剤を服用できる
  • 感染リスクを減らすことができる
  • 医療スタッフに気軽に連絡がとれない
  • 効果判定がきちんとできない
  • 自宅から病院までの移動中に便意をもよおすことがある
院内服用
  • 医療スタッフがいるため安心感がある
  • 医療スタッフが服用手順を説明してくれる
  • 下剤の効果判定が的確
  • 自宅から病院までの移動中の心配がない
  • 他の人と一緒に下剤を服用しなければいけない
  • 院内の滞在時間が長くなる
個室での院内下剤

当クリニックでは、プライベート性の高い完全個室を3部屋用意しています。個室内には全室テレビを設置しており、映画やドラマを見ながら快適にお過ごしいただけます。
また、院内ではフリーWi-Fiが利用できますので、ご自身のパソコンなどをお持ちいただき、お仕事をしながらリラックスして下剤を服用していただけます。

MEDICAL下剤服用時の注意点

下剤を飲む際に最も気を付ける必要がある合併症は腸管破裂です。特に、大腸がんがある場合は、腸閉塞や腸管穿孔のリスクが高まるため、事前に腹部レントゲンで腸閉塞がないことを確認することが重要です。
その他にも起こる可能性がある合併症に、脱水症による「血栓症」や嘔吐に伴う「マロリーワイス症候群」、「アナフィラキシー」「虚血性腸炎」などがあります。

下剤は自分のペースでゆっくりと飲む

下剤の服用の際は、一気に飲むのではなくコップ1杯程度の量を10分程度かけてゆっくりと飲みましょう。下剤は一気に飲むと、腸管破裂を起こすリスクがあります。特に、便秘気味の方や大腸がんが疑われる方は、腸管が狭くなっている可能性があるため、ゆっくりと飲んでください。
心配な方は、大腸カメラ検査の前に、腹部エコー検査やCT検査を受けて、腸管閉塞の有無について確認しましょう。ご高齢の方や便が全くでない方は、入院での事前処置や検査が必要になることがあります。

下剤の副作用があればすぐに医療スタッフに報告・相談

下剤による副作用が出た場合は、すぐに医療スタッフに報告・相談をしてください。下剤による主な副作用は、腹痛や吐き気、嘔吐、全身倦怠感、起立困難、呼吸困難などが挙げられます。
これらの副作用が出た場合は、腸管破裂や閉塞性大腸炎、血栓症、マロリーワイス症候群、アナフィラキシー、虚血性腸炎、高マグネシウム血症といった合併症を発症している可能性があります。これらの合併症が起こっている可能性がある場合には早急な治療が必要になります。

MEDICAL下剤の費用

各下剤の費用は、下記のとおりです。なお記載費用は10割負担の場合の金額で、加入されている保険により、記載費用の1~3割の費用負担となります。

下剤の種類 費用
マグコロールP 769.1
モビプレップ 1839.4
ニフレック 851.9
ビジクリア 2675.0
ピコプレップ 1011.6
サルプレップ 1918.0

最も安いのはマグコロールPですが、マグコロールPをお選びいただく場合は、前日に他の下剤を飲む必要があるため、別途他の薬剤の費用がかかります。
ニフレックは、モビプレップの約半分の費用となりますが、飲みやすさを考えるとモビプレップの方がお勧めです。

監修医師 安江 千尋

安江 千尋

院長資格

専門医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
指導医
  • 日本消化器内視鏡学会指導医

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本大腸肛門病学会
  • 日本消化管学会
院長紹介
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