食道がん

Medical 食道がん

MEDICAL食道がんとは

食道は、のどと胃の間をつなぐ細長い管状の臓器で、場所によって、口側から、頸部食道、胸部食道(胸部上部食道・胸部中部食道・胸部下部食道)、食道胃接合部と呼ばれています。食道がんは、食道粘膜にある細胞ががん化することで発症します。日本人の食道がんでは、食道の中央付近(胸部中部食道)に発生するケースが約半数、次いで胸部下部食道、胸部上部食道に見られます。食道胃接合部や頸部食道にもがんができることがあり、場合によっては食道内にいくつもがんができることもあります(多発がん)。食道がんは、がんのできる場所によって2種類に分類され、扁平上皮からできる「扁平上皮がん」と、円柱上皮からできる「腺がん」があります。
また、バレット食道から生じたがんは「バレット食道がん」と呼ばれ、腺がんに分類されます。扁平上皮がんは、日本人の食道がんのうち約90%を占めますが、近年はバレット食道がんなどの腺がんも増加しています。
食道がんは進行すると食道壁の深層へと広がっていき、食道壁の広がる深度によって「早期食道がん」「表在食道がん」「進行食道がん」に分類されます。「早期食道がん」は、食道壁の粘膜内にとどまっている状態で、「表在食道がん」は、粘膜下層までしか及んでいない状態、「進行食道がん」は、粘膜下層よりも深い層までがんが広がっている状態です。
進行がんになると転移のリスクが高くなり、血管やリンパ管にがん細胞が浸潤すると、肺や肝臓、骨、リンパ節に転移します。また、がんが食道壁より深いところに広がると、気管や大動脈などの近くの臓器に直接浸潤する恐れがあります。
一般的に、食道がんは男性に多く、60~70歳代に発生することが多いと言われています。転移リスクが高く、進行も早いので早期発見がとても重要ながんの一つです。また、胃がんや頭頚部がんなどの他のがんを重複することも少なくありません。

MEDICAL食道がんの原因

食道がんの原因は、主に飲酒と喫煙です。特に日本人に多い扁平上皮がんの場合は、喫煙と飲酒の影響が大きいとされています。アルコールが体内で分解されることでできるアセトアルデヒトは発がん性物質であり、アセトアルデヒドの分解酵素の活性が遺伝的に弱いかたは食道がんの発症リスクが高いとされています。
また、日常的に飲酒をしている方や喫煙と飲酒の両方の習慣がある方はより発症リスクが高くなるとされています。さらに、栄養状態が悪い、果物・野菜をあまり摂取しないなどの食習慣も、食道がんの発生に影響していると考えられています。
なお、腺がんの場合は、逆流性食道炎やバレット食道など、長期間の胃酸の逆流により、食道下部が慢性的な炎症を引き起こすことがリスクを高めると言われています。

食道がんのリスクが高い方

以下に当てはまる方は、食道がんを発症しやすい傾向にあるため、特に自覚症状がなくても、1度胃カメラ検査を受けることをお勧めします。

  • 喫煙習慣がある方
  • お酒を飲むと顔が赤くなりやすい方
  • 日常的に多量の飲酒をする方
  • 50歳以上の男性
  • 頭頚部のがんを発症したことがある方
  • バレット食道や腐食性食道炎、食道アカラシアをお持ちの方
  • 逆流性食道炎がある方
  • 肥満の方
  • 家族に食道がんの既往がある方

MEDICAL食道がんの初期症状

食道がんは、自覚できる初期症状がありません。早期発見のためには、胃カメラ検査が必要です。

進行した場合に起こる症状

食道がんが進行すると、以下の症状が現れます。以下の症状は食道がん以外の疾患でも起こり得るため、自己判断はせず医師の診察を受けましょう。

  • 声のかすれ、声枯れ(嗄声)
  • 持続する咳
  • 食べ物がつかえる(嚥下困難)
  • 体重減少
  • 熱いものがしみる
  • 胸やけ
  • 背中や胸の痛み(背骨に転移した場合)

MEDICAL食道がんの検査

食道がんの検査では、バリウム検査や胃カメラ検査を行います。バリウム検査は、ある程度大きくなった食道がん(進行食道がん、潰瘍、狭窄)の発見には向いていますが、早期の食道がんの発見には向いていません。一方、胃カメラ検査は、自覚症状がまだ現れていないごく早期の食道がんの発見にも有効とされている検査です。
当院では食道粘膜表面の毛細血管の分布や太さなどから微小な食道がんを発見できるNBI(Narrow Band Imaging)という特殊な光を用いることで、より簡便で見落としの少ない検査を短時間に行うことが可能です。
また、検査中に疑わしい病変が発見された場合は、組織を採取し、病理検査を行うことで診断を確定させることもできます。飲酒や喫煙など、食道がんのリスクが高い方は、胃カメラを強くお勧めします。
当院では、鎮静剤を用いた苦痛のない胃カメラ検査を行っていますので、安心してご受診ください。

MEDICAL食道がんの治療

表在食道がんの治療

表在食道がんの治療では、内視鏡治療と外科手術、化学放射線療法(化学療法と放射線治療)の3つがあり、食道の周囲にあるリンパ節を切除する必要の有無(リンパ節への転移のリスクの有無)によって治療法を選択します。
リンパ節への転移の可能性が十分低いと考えられる場合は、内視鏡治療を行い、内視鏡下に電気メスによって直接病変の切除を行います(内視鏡的粘膜下層剥離術)。内視鏡治療は、外科手術と異なり開胸しないため、全身麻酔を施す必要もなく、体への負担が非常に少ないです。
ただし、切除した病変の病理検査の結果、リンパ節への転移の可能性があると判明した場合は、追加で治療を行う必要が生じます。
内視鏡治療が困難である場合や追加治療が必要な場合は、外科手術や化学放射線療法を行います。

進行食道がんの治療

進行がんの治療では、遠隔転移がなく、手術でがんが取り除ける場合は外科手術を行い、体力的に手術ができない場合や、手術を希望されない場合は化学放射線療法や放射線治療のみを行います。
また、がんの広がり方によっては、外科手術の前後に、補助的に化学療法を行うことがあります。がんが遠隔転移しており、がんが取り除けない場合は、がんの進行を抑えるための化学療法を行います。

監修医師 安江 千尋

安江 千尋

院長資格

専門医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
指導医
  • 日本消化器内視鏡学会指導医

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本大腸肛門病学会
  • 日本消化管学会
院長紹介
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