機能性ディスペプシア

Medical 機能性ディスペプシア

MEDICAL機能性ディスペプシアとは

機能性ディスペプシアとは、胃の痛みや胃もたれ、腹部膨満感などのお腹の症状が続いているにもかかわらず、胃カメラ検査などを行っても、異常が見つからない疾患です。
日本人のおよそ4人に1人が経験すると言われていますが、以前は神経性胃炎・ストレス性胃炎として診断されて適切な治療が受けられず、長年症状に悩まされる方が少なくなかった病気です。
近年になって「機能性ディスペプシア(FD)」という疾患の概念が成立し、有効な治療法が登場してきています。

MEDICAL機能性ディスペプシアの原因

胃には、食べ物をためる機能(適応性弛緩)と、十二指腸へ送り出す運動機能(胃排出能)があります。これらに何らかの原因(ストレスや過食・不規則な食生活、喫煙、過度なアルコールなど)で異常が生じて、症状が引き起こされると考えられています。また胃酸過多や高脂肪食、ピロリ菌感染、胃腸炎などの炎症によって、十二指腸や食道の知覚過敏や運動障害が悪化することも原因の一つといわれています。
複数の要因が複雑に関与しあって悪化させてしまうことも多い疾患です。 適応性弛緩が中心に異常が生じた場合、「少し食べるだけでお腹いっぱいになる(早期飽満感)」が出現しやすくなります。一方、胃排出能に異常が生じると、「食後のもたれ感」などが出現します。知覚過敏が生じると、みぞおちの痛み(心窩部痛)やみぞおちの焼ける感じ(心窩部灼熱感)が起こります。
ほかにも、心理社会的要因も原因の一つと考えられており、睡眠不足や過労などの身体への負担に加えて、悩みやストレスを抱えていることが、機能性ディスペプシアの症状を引き起こすと言われています。不安やうつなどの気分の不調も症状に影響します。

ピロリ菌と機能性ディスペプシア

かつては「慢性胃炎」とひとくくりにされていたケースでも、現在は厳密に診断が下されるようになっています。その代表的な疾患が、ピロリ菌感染による慢性萎縮性胃炎と機能性ディスペプシアです。
特にピロリ菌感染による慢性的な胃炎が持続していると胃の運動能が低下しやすくなりますが、ピロリ菌の除菌治療に成功すると胃の運動能が回復する可能性があります。
正しい診断を受けることで、適切な治療が可能になります。慢性的な胃の症状で長くお悩みの方は、専門医による適切な検査と治療を受けることをお勧めします。ぜひ一度当院にご相談ください。

MEDICAL機能性ディスペプシアの症状

主な症状は「食後のもたれ感」「少し食べるだけでお腹いっぱいになる」「みぞおちのあたりの痛み」「胸やけ」や「吐き気、げっぷ」など非常に多彩です。ご本人にとって多くの症状はとてもつらく、生活の質を大きく低下させてしまいます。

MEDICAL機能性ディスペプシアの診断

機能性ディスペプシアが疑われたらまずは患者様に、「自覚症状」や「症状の出現する頻度」、「症状の続いている期間」、「症状が起きるときの状況」などをうかがいます。
しかし、症状だけで機能性ディスペプシアの診断を下すことはできません。
機能性ディスペプシアの診断には、似たような症状を示す他の病気(胃・十二指腸潰瘍や胃がんなどの上部消化管の器質性疾患や、胃の周辺臓器の悪性腫瘍[膵がん・胆嚢がん・大腸がんなど])がないことを検査で確認することが重要です。
実際に胃や周辺臓器の「がん」や炎症、ピロリ菌感染の有無を診断するために、採血や内視鏡検査、腹部超音波検査、CT検査などを行うことを強くお勧めします。

MEDICAL機能性ディスペプシアの治療

薬による治療

諸症状の考えられる原因に応じて、胃酸の分泌を抑える薬[P-CAB(ボノプラゾン)やプロトンポンプインヒビター(エソメプラゾールなど)、H₂ブロッカー(ファモチジンなど)]や、胃の動きを促す薬(アコチアミドやモサプリドクエン酸など)、漢方薬(六君子湯など)などを使用します。
上記のような薬で改善せず、悩みやストレスなどの心理的な負担や、不安やうつなどの気分の不調要因が強いと考えられる場合には、抗うつ薬や抗不安薬(スルピリドなど)が有効であるケースも見られます。 また、ピロリ菌に感染している場合には、ピロリ菌の除菌治療を行います。

生活習慣・食習慣の改善

脂質には胃の動きを止めてしまう作用があるため、胃の症状があるときには脂肪分の多い食事(揚げ物や炒め物、生クリーム、ナッツ類など)は避けましょう。また、胃酸の分泌を刺激するコーヒーやアルコール、香辛料、炭酸飲料などの摂取も控えるようにしましょう。規則正しい生活を取り戻すことで、自律神経の乱れを改善することができます。
高カロリーの食事を多量に摂取すると胃腸の動きが低下してしまうため、水分を多く摂り、小分けにゆっくり食べることを意識しましょう。 また、胃に優しい食べ方(よく噛む・食べ過ぎない・食べてすぐ運動をしない)をすることも有効です。

MEDICAL機能性ディスペプシアの
対策・対処法

機能性ディスペプシアの予防では、生活習慣と食習慣の改善が有効です。 また、機能性ディスペプシアになる方は、ストレスを抱えがちだと言われています。
ストレスを“ゼロにする”のではなく、“うまく付き合っていく”ことを意識していきましょう。

生活習慣の改善

機能性ディスペプシアの原因にはさまざまなものが考えられ、自律神経の乱れもそのうちの1つになることがあります。
毎朝、早めに起きて朝食をしっかり食べ、規則正しく暮らすことで生活リズムを取り戻しましょう。朝日をしっかり浴びると体内時計がリセットされ、生活リズムを整えやすくなるとされています。
生活習慣を改善すると体力・代謝・免疫力も上昇します。
バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動により生活リズムを取り戻し、自律神経の働きを整えておきましょう。 また、喫煙習慣のある方は、できる限り禁煙しましょう。

食習慣の改善

バランスの良い食事を3食、規則正しくとってください。食事の際には、よく噛むこと、食べ過ぎないこと、食べてすぐに運動をしないことなど、「胃に優しい食べ方」をするのが重要です。こちらは、意識さえできればすぐに実践が可能です。
併せて、体調を整えるためにも、バランスの良い食事を摂るように気をつけましょう。いきなり過度に節制するのは、かえってストレスとなる恐れがあります。無理のない範囲で徐々に改善していきましょう。

ストレスと“うまく付き合っていく”

どんな環境・境遇でもストレスをゼロにすることはできないため、ストレスといかにうまく付き合えるかが重要になります。ストレスは、日々激務に追われている人だけに起こるものではありません。主婦・主夫の方、学生の方、定年退職後の方、お子様、誰でも生活の中のどこかでストレスを感じています。
そして中には、大きなストレスを受けても、それをうまく解消している人がいます。反対に、それほどストレスは大きくないのに考え過ぎる人、解消する術を知らないためにいつも心身に負担を抱えている人もいます。こまめにストレスを解消したり、ストレスに負けない体と心を整えたりするなどして、少しでもストレスと上手に付き合っていく工夫が必要です。

朝は決まった時間に起きましょう

朝は、決まった時間に起きるようにしましょう。同じ時間に起きることで、同じ時間帯に身体の機能が活発になり、調子を整えやすくなります。仕事や勉強、家事の能率も上がり、ストレスの原因となるミスやトラブルを少なくすることができます。
免疫力が上昇することで、風邪をはじめとする病気にも強くなります。

適度な運動をしましょう

身体を動かし、程よく汗をかくのは、ストレスの解消に大いに役立ちます。ウォーキングやジョギング、水泳、その他のスポーツなど何でも構いません。
ちょっとした時間に気軽にできるものを一つ作っておくと良いでしょう。 ただし、アスリートが取り組むような厳しいトレーニングなどは逆にストレスとなることがあります。無理なく、運動を楽しむことが大切です。

趣味の時間・リラックスできる時間を確保しましょう

音楽鑑賞や映画鑑賞、生き物の飼育、スポーツ、読書、ヨガなど、趣味に打ち込む時間を作りましょう。
また、夕方から夜にかけてリラックスできる時間を確保することで、自律神経のバランスが整い、スムーズな入眠を促します。

監修医師 安江 千尋

安江 千尋

院長資格

専門医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
指導医
  • 日本消化器内視鏡学会指導医

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本大腸肛門病学会
  • 日本消化管学会
院長紹介
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