MEDICALスキルス胃がんとは
スキルス胃がんとは、通常の胃がんとは異なり、胃の粘膜の表面からではなく、胃の壁の内部を這うように広がっていく胃がんで、胃がん全体の約7~10%を占めるとされています。胃壁の外側に進展し、腫瘍が胃の壁外に露出することもあります。
一般的な胃がんは50歳以降に罹患しやすく高齢者に多いですが、スキルス胃がんは20~40代の若い世代でも罹りやすいので注意が必要です。また、胃がんの患者は男性が多いのに対し、スキルス胃がんは女性の罹患率が高いという違いもあります。スキルス胃がんは早期発見が難しく、発見されたときには既に進行がんであることが多いです。また、60%以上の患者様には発見時にすでに転移が見られ、5年生存率(診断されてから5年後に生きている確率)は0~9.5%程度と非常に低いとされています。
スキルス胃がんは「硬化型胃がん」とも呼ばれており、胃の壁を厚く硬くするため、胃が自由に伸び縮みできなくなります。そのため、食事を少し摂っただけですぐに満腹になったり、食べ物を吐いてしまうなどの症状が起こることが多いです。
スキルス胃がんは、胃の壁外に広がりやすく、がん細胞がお腹の中にばらまかれるように腹膜の表面に広がる、「腹膜播種」と呼ばれる状態になることがあり、腹膜播種の状態になると腹膜内に腫瘍が散在して広がってしまうため、手術での治療が難しく、延命目的の化学療法を行います。
現在スキルス胃がんの治療では、免疫療法や遺伝子治療などの新たな治療法の期待が高まっています。早期発見が困難ですが、早期に発見できれば治療の成功率が上がりますので定期的な胃カメラ検査を受けることが重要です。特に、胃に不快感を感じる、すぐに満腹になる、体重が減少するなどの症状があれば、早めに受診しましょう。
MEDICALスキルス胃がんの原因
スキルス胃がんの原因ははっきりとはわかっていませんが、他の胃がんと同様に、複数の要因が関与して起こると考えられています。
最近の研究では遺伝子異常が発症に関与していることが判明しています。具体的には、CDH1という遺伝子やがん抑制遺伝子のEカドヘリンやp53と呼ばれる遺伝子などに異常を生じることが、病気の発症に関わると言われています。
ピロリ菌感染
ピロリ菌感染は、スキルス胃がんの発症に関与していると考えられています。ピロリ菌に感染すると胃粘膜に慢性的な炎症が起こり、その炎症が長時間続くと胃がんの発症リスクが高まると考えられています。
食生活
塩分の過剰摂取や食事による胃への刺激、加工食品の食べ過ぎなどの食生活によって胃に負担がかかると、胃がんの発症リスクが高まると考えられています。
喫煙と飲酒
喫煙や過度な飲酒は胃がんのリスクを増加させます。
遺伝的要因
スキルス胃がんと遺伝子変異が関係しているとする研究が進んでいます。
具体的には、CDH1という遺伝子や、がん抑制遺伝子のEカドヘリンやp53と呼ばれる遺伝子などに異常を生じることでスキルス胃がんが発症しやすくなることがわかっています。しかし、親がスキルス胃がんになったから子どもも発症するというほどはっきりした遺伝は現在のところ確認されていません。
MEDICALスキルス胃がんに男女差ある?
胃集団検診の成績では、胃がん全体での男女差を見ると、男性の方が明らかに多いのですが(60~70%くらいが男性)、スキルス胃がんだけでみると、逆に女性が60~70%を占めています。20~30代の若年層の女性がスキルス胃がんに罹患すると、まだ小さい子供を抱えながら大変な闘病生活を送ることになってしまいます。
また、女性ホルモンと胃がんの発症リスクに関連性があると示唆する研究報告もありますが、明らかな関連性は示されておらず、研究が進められているところです。若い女性であっても、胃に不快感を感じる、すぐに満腹になる、体重が減少するなどの症状があれば、早めに受診しましょう。
MEDICALスキルス胃がんの症状
MEDICALスキルス胃がんの検査
胃カメラ検査
胃カメラ検査は、先端にカメラが付いた細いスコープを、口または鼻から挿入し、のど(咽頭)や食道、胃、十二指腸の粘膜の状態をリアルタイムに観察する検査です。スキルス胃がんは通常の胃がんとは異なり、胃の粘膜の表面からではなく、胃の壁の内部を這うように広がっていくため、粘膜表面の変化が現れにくく、肉眼で確認しづらいがんであり、内視鏡検査で見つけることが困難とされています。
しかし、スキルス胃がんも進行するにつれて胃の粘膜ひだが太くなったり、なめらかさがなくなったりするため、内視鏡検査でも確認できる場合もあります。スキルス胃がんには、胃壁が硬くなり、胃の柔軟性が失われるという特徴があるため、内視鏡検査時には胃に空気をいれて膨らませて検査を実施し、胃の膨らみにくさを確認することが大事です。
当院では豊富な経験をもつ内視鏡専門医と、最先端の内視鏡機器を用いた検査により、バリウム検査以上に早期発見ができるよう努めています。安心して胃カメラ検査をご選択ください。
腹部超音波検査
腹部超音波検査は、超音波を用いてお腹の中の臓器や組織の状態をリアルタイムに観察する検査方法です。
痛みを伴わず、放射線を使用しないため、妊婦や子どもにも安全に受けていただける検査です。スキルス胃がんにおける腹部超音波検査では、リンパ節転移や肝臓への転移の有無、腹水の有無などを確認します。
CT検査
CT検査は、X線を利用して身体の断層画像を撮影する検査方法です。通常のX線撮影では得られない詳細な画像が得られるため、様々な疾患の診断や治療計画に使用されます。
スキルス胃がんは胃壁の外に進展することがあるため、CT検査では、腫瘍の位置や周囲の臓器への広がりや遠隔の臓器への転移の有無などを評価します。
PET‐CT
PET-CTとは、PETとCTの両方の技術を組み合わせた先進的な画像診断技術で、PETは体内の代謝活動を画像化し、CTは詳細な解剖学的構造を提供します。放射性物質(FDG:フルオロデオキシグルコース)を体内に注射し、腫瘍の活動や分布を観察する検査です。
FDGはグルコース(ブドウ糖)の類似物で、がん細胞は正常な細胞よりも高い代謝率をもつため、がん細胞に多く取り込まれます。
PETスキャナは放射性物質が崩壊する際に放出するポジトロンを検出し、体内のグルコース代謝活動を画像化します。転移の有無やがんの広がり具合を評価する際に行われます。
MEDICALスキルス胃がんの治療
スキルス胃がんは、診断された際には既に進行がんで遠隔転移を伴い、手術ができない場合が多いため、根本的な治療は難しく、主に抗がん剤治療や放射線治療によって、がんの症状の進行を遅らせたり、症状を緩和するなどの延命を目的とした治療を行います。
がんが局所にとどまっている場合には手術療法を行われるケースもありますが、手術単独では根治が難しいことが多いがんです。
また、最近では、免疫療法や遺伝子治療などの新しい治療方法の期待が高まっています。治療方針は患者様の年齢や体力、病気の状態、転移の有無によって異なるため、まずは早期発見のための定期的な胃カメラ検査を受けることが重要です。
監修医師 安江 千尋
院長資格
- 専門医
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- 日本内科学会総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 指導医
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- 日本消化器内視鏡学会指導医
- 日本消化器病学会指導医
所属学会
- 日本内科学会
- 日本消化器病学会
- 日本消化器内視鏡学会
- 日本大腸肛門病学会
- 日本消化管学会