大腸がん検査でひっかかった(便潜血陽性)

Medical 大腸がん検査でひっかかった(便潜血陽性)

MEDICAL便潜血検査とは

便潜血検査とは、目に見えないほど微量な血液が便に混ざっているか(便潜血)を調べる検査です。便潜血は、消化管のどこかから出血がある可能性を示しており、便潜血検査は初期症状がない早期の大腸がんのスクリーニング検査として定期検診や人間ドック、がん検診などで行われます。便潜血検査には、血液に含まれるヘモグロビンの活性を利用し、化学的に色素の変化で潜血の有無を判定する「化学法」と、ヒトのヘモグロビンに対して特異的に作用する試薬を用いて、抗原・抗体の反応で潜血の有無を判定する「免疫法」がありますが、現在の日本におけるがん検診などでは「免疫法」が主流となっています。
「免疫法」は、消化酵素などの影響でヘモグロビンが変性してしまうため、上部消化管(食道や胃、十二指腸)からの出血に対する検出率は低下しますが、大腸からの出血では「化学法」よりも高感度に検出します。
したがって、便潜血検査で「陽性」となっている場合は、主に大腸に何かしらの異常が発生して出血している可能性を示しています。
便潜血検査は、3日以内に2回にわたって専用のスティックで便を採取する便検査(2回法)です。大腸がんは、便潜血が2回のうち1回陽性の方で、20人に1人、2回のうち2回とも陽性の方で10人に1人の割合で見つかるとされています。便潜血検査を2回にわたって行うのは、大腸がんであっても便に含まれる血液成分が少ない日もあることから、大腸がん患者を見つけ出す確率を上げるためです。
そのため、2回のうち1回しか陽性でなかったから大丈夫と考えるのは誤りです。便潜血検査が陽性だった場合は、必ず大腸カメラ検査を受けましょう。
健康な方の便にも若干の血液が含まれるため、便潜血検査が陽性だったとしても必ずしも大腸がんであるわけではありませんが、大腸がんが見つからなくても、40歳以上の成人の3人に1人に前がん病変である大腸ポリープが見つかるため、大腸カメラ検査は無駄ではありません。大腸ポリープの治療は大腸がんの予防になります。

MEDICAL便潜血検査陽性の場合は精密検査を受けましょう

便潜血検査で1回でも陽性が出た場合は、大腸がんの可能性があるため、必ず精密検査を受けましょう。

大腸がん以外の疾患もあります

便潜血検査で陽性となっても、その出血が何の疾患によってもたらされているかは他の検査を行わないと判明できません。大腸がん以外の疾患でも、痔や大腸ポリープ、炎症性腸疾患などでは出血が起こります。
痔の方が、便潜血検査の陽性を、痔の出血だと自己判断し、精密検査を受けないことがありますが、便潜血陽性の30%の方に大腸ポリープが見つかり、3%は大腸がんが見つかるという報告がありますので必ず精密検査を受けましょう。また40歳未満の方で、便潜血検査が陽性だった場合も注意が必要です。
20代の方でも大腸がんになることはあり、大腸がんの他にも潰瘍性大腸炎やクローン病などの若年者に多く発症する難病の可能性があります。

MEDICAL便潜血検査陰性の方へ

便潜血検査は、大腸がんのスクリーニングテストとしては有効な検査ですが、早期のがんや前がん病変の大腸ポリープなどの、出血することの少ない病変の発見率は劣ります。
また、小腸に近い深部の大腸に大腸がんができている場合は、通過する便が柔らかく、擦れて出血することが少ないため、発見できないこともあります。そのため、たとえ便潜血検査が陰性であったとしても、大腸がんの可能性を否定することはできません。実際に健診の便潜血検査では、早期の大腸がんの約半数、進行がんでも8割ほどしか見つからないと言われています。
そのため、たとえ便潜血検査が陰性であっても、大腸ポリープの発生リスクが高まる40歳を過ぎたら定期的に大腸カメラ検査を受けるなどして、大腸がんを予防していくことが重要です。また、血縁者に大腸がんを発症した方がいる場合は、30歳を過ぎたころから大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。
血縁者に大腸がんを発症した方がいる場合、中には遺伝性大腸がんの発症リスクが高い「リンチ症候群」と呼ばれる疾患が隠れていることがあります。「リンチ症候群」は若くして進行大腸がんを発症することが多く、20~30代でも油断できません。

MEDICAL便潜血検査陽性で考えられる疾患

便潜血は、小腸や大腸、肛門からの出血によるものであることが多く、出血を起こす疾患としては、細菌感染による感染性腸炎や、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患大腸ポリープ大腸がん、憩室出血、虚血性腸炎、痔疾患などの小腸・大腸の疾患が考えられます。
感染症による出血の場合は、カンピロバクターやO-157に代表される病原性大腸菌や、腸炎ビブリオ、サルモネラ菌などが原因となることが多いです。

肛門の病気

イボ痔

イボ痔は、肛門周辺の静脈がうっ血することで、イボ状に腫れる疾患です。
イボ痔は肛門の直腸側にできる内痔核と、肛門の外側にできる外痔核があり、特に内痔核が肛門から外へ飛び出る(脱肛)と、鮮血性の出血を起こすことがあります。

切れ痔

切れ痔は、便秘による太くて硬い便の排出や、勢いの激しい下痢の排出によって、肛門に異常な負担がかかり、皮膚側の肛門が裂けてしまうことで起こります。
皮膚が裂けることで少量の出血が起こります。

肛門ポリープ・見張りイボ

イボ痔や切れ痔を繰り返すと、肛門周辺の皮膚や粘膜が常に炎症を起こした状態になり、イボが形成されます。
肛門の直腸側の粘膜にできるイボが肛門ポリープ、肛門の皮膚側にできるイボが見張りイボと呼ばれます。どちらも排便の際に出血を起こすことがあります。

大腸の病気

大腸ポリープ、大腸がん、直腸がん

大腸ポリープや大腸がんは出血しやすく、便と擦れる程度の刺激でも出血を起こします。
直腸がんは大腸がんの一種で、直腸に発生する悪性腫瘍です。直腸は便が溜まりやすく、硬い便との接触時間が長い部位であるため、特に出血を起こしやすいです。
病変の位置によって暗褐色から鮮血色まで様々な色や状態の出血が見られます。

直腸脱、直腸粘膜脱

直腸脱とは、排便時に強くいきむことによって、直腸全体が反転して、肛門外に飛び出てしまう状態です。
また、直腸粘膜の一部が肛門の外に飛び出した状態を直腸粘膜脱と呼びます。どちらの状態でも、潰瘍を伴うと、出血を起こす可能性があります。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は、原因不明の炎症が、大腸粘膜に連続的に広がっていく疾患で、腹痛や下痢、粘血便などを起こします。日本では難病の1つに指定されており、発症頻度は10万人に100人程度とされています。
症状の激しい活動期と症状の現れない寛解期を繰り返すという特徴があります。
完治に導く内科的治療は今のところありませんが、近年生物学的製剤と呼ばれる、様々な専用の薬が登場し、潰瘍性大腸炎の治療が飛躍的に進歩しました。活動期、寛解期を通して治療を続けることで、病気のない方と変わらない日常生活を長く維持することもできるようになりました。

大腸憩室出血

大腸憩室出血とは、大腸の壁が反転して袋状に突き出した「大腸憩室」から出血した状態です。大腸憩室は主に加齢によるものですが、食生活や遺伝的要因も関与します。
日本では右側結腸(上行結腸)に憩室が多く見られますが、西洋では左側結腸(下行結腸、S状結腸)に多い傾向があります。憩室周囲の血管は細く出血しやすいため、憩室に炎症が起こったり、便が憩室内に詰まって圧力がかかると出血することがあります。
大腸憩室出血は、少量のものから便器が真っ赤になるほど大量の出血を起こすこともあります。

虚血性腸炎

虚血性腸炎とは、腸の血管が動脈硬化などによって一時的に虚血状態になることで、その部分の腸粘膜に急激な炎症が起こり、びらんや潰瘍が生じた状態です。
急激な腹痛の後に、普通の便通があり、その後鮮血が混じった下痢や鮮血便が出るという特徴があります。虚血性腸炎は便秘などでいきむことによって起こることもあります。

監修医師 安江 千尋

安江 千尋

院長資格

専門医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
指導医
  • 日本消化器内視鏡学会指導医

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本大腸肛門病学会
  • 日本消化管学会
院長紹介
pagetop