胃がん

Medical 胃がん

MEDICAL胃がんとは

胃がんとは、胃の粘膜に発生する悪性上皮性腫瘍のことです。胃がんは徐々に内側の粘膜から一番外側にある漿膜に向かって増殖していき、さらに進行すると近くにある膵臓や大腸などの臓器にがんが直接広がるようになります。
さらに、漿膜から剥がれたがん細胞がお腹の中に散って腹膜の表面に生着することもあり、これを腹膜転移と呼びます。また、がん細胞がリンパ管を通じて近隣のリンパ節に転移したり、血管を通じて肝臓や肺などの遠くの臓器に遠隔転移をすることもあります。
日本では、胃がんは、がん死亡者数が男性では3番目、女性では5番目に多いがんです。胃がんはピロリ菌の持続感染や喫煙、塩分のとりすぎや野菜不足などの生活習慣がリスクとなって発生するとされています。中でもピロリ菌感染は、一番のリスクであり、胃がんの原因の99%を占めるとされています。ピロリ菌の持続感染者の約1~3%に胃がんが発生しています。そのため、ピロリ菌に感染しているとわかった場合は、ピロリ菌の除菌治療を行い、胃がんの発生リスクを軽減しています。
また、ピロリ菌の除菌治療を行っても、胃がんの発生リスクがゼロになるわけではないため、定期的に胃カメラ検査を行うことを勧めています。ピロリ菌の除菌治療の他にも、禁煙や食習慣の改善を行うことも重要です。

MEDICAL胃がんの原因

胃がんの直接的な原因ははっきりとはわかっていませんが、ピロリ菌感染による慢性的な胃粘膜の炎症が、胃がんの主な原因であると考えられています。ピロリ菌に感染している方が皆、胃がんになるわけではありませんが、胃がんの発生リスクが高まると言われています。
さらに、塩分の多い食事や野菜や果物の不足などの食習慣、喫煙、過度の飲酒、ストレスなどの生活習慣も胃がんのリスクを高めると考えられています。胃がんそのものは遺伝しませんが、ご家族に胃がんの方がいらっしゃる場合には共通の環境要因により注意が必要です。

胃がんにかかりやすい人

胃がんは、女性よりも男性の方が発症率が高く、男性の10人に1人、女性の21人に1人の割合で胃がんを発症すると推定されています。
胃がんの発生率は、50歳から増加し、80代で最も高くなります。ただ、高齢化の影響はあるものの、除菌治療によるヘリコバクター・ピロリ菌感染率の減少や冷蔵技術の普及による食生活の改善、食塩摂取量の減少、そして早期発見と治療技術の向上により、長期的には胃がんの発生率および死亡率は減少傾向にあります。
ピロリ菌感染の既往がある方だけでなく、喫煙や塩分の摂り過ぎ、過剰な飲酒は胃がんの発症リスクを高めるため、注意が必要です。

MEDICAL胃がんの種類

分化型胃がん(Well-differentiated gastric cancer)

分化型胃がんとは、がん細胞が腺管構造を作りながら、まとまって増殖するタイプの胃がんで、がん細胞が胃組織に近い形態をしています。
胃がん全体の中でも比較的一般的なタイプです。分化型胃がんは、比較的緩やかに進行し、周囲の組織に浸潤するのも遅い傾向があります。

未分化型胃がん(Poorly differentiated gastric cancer)

未分化型胃がんとは、がん細胞がバラバラと広がるように増殖するタイプの胃がんで、がん細胞は正常な胃組織とは大きく異なる形態をしています。未分化型胃がんは、進行速度が速く、早期に周囲の組織に浸潤したり、リンパ節や遠隔臓器へ転移する可能性が高いため、予後が不良(死亡したり重い後遺症を残すケースが少なくない)とされています。

リンパ上皮性胃がん(Lymphoepithelioma-like gastric cancer)

リンパ上皮性胃がんとは、胃のリンパ上皮に由来して起こる稀なタイプの胃がんで、リンパ腫に似ています。
リンパ上皮性胃がんは、胃壁を圧迫するように浸潤していきます。エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)感染との関連が報告されており、胃の上部(噴門部)に発生することが多いとされています。

スキルス胃がん(Scirrhous gastric cancer)

スキルス胃がんとは、胃壁や胃の組織にしみこんでいくように進行し、胃壁を硬く厚くさせる胃がんです。未分化型がんであることが多く、通常の胃がんとは異なり、潰瘍などの病変を作らないため、内視鏡検査など肉眼で確認する検査では発見が困難な傾向があります。周囲の臓器やリンパ節に浸潤しやすく進行速度が速いという特徴があります。
スキルス胃がんは胃がん全体の約7~10%を占め、進行胃がんに限ると15%にまでのぼります。
スキルス胃がんは5年生存率(診断されてから5年後に生きている確率)が0~9.5%と、非常に低い状況にあります。通常の胃がんは喫煙者の多い男性やピロリ菌に感染している率の高い高齢者に発症しやすいのに対し、スキルス胃がんは女性や20代といった若年層にも発症することがあります。

MEDICAL胃がんの症状

胃がんは、初期の段階で自覚症状が出ることはほとんどないという特徴があります。
胃がんが進行すると、みぞおちの辺りの痛みや不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などが生じますが、ほかの良性の胃腸疾患と似たような症状であり、胃がんに特有の症状がないため発見が難しいがんの一つです。出血を伴っている場合は、黒色便が出たり、吐血することもあります。
しかし、かなり胃がんが進行していても症状が現れないこともあるため、注意が必要です。胃の不調を感じたら、まずは消化器内科を受診してしっかりと検査を受けるようにしましょう。

MEDICAL胃がんの検査

胃がんの検査では、胃カメラ検査やバリウム検査が行われます。胃がんの発見率は、バリウム検査よりも胃カメラ検査の方が高く、胃カメラ検査における胃がんの発見率はバリウム検査の2.5倍とされています。
バリウム検査では造影剤を用いて間接的に粘膜の形態を把握するのに対し、胃カメラ検査では粘膜の形態だけでなく、病変の色合いや空気量の調整による変形具合などを直接観察することができるため、特に早期胃がんの発見率が高くなります。
ただ、スキルス胃がんの発見率においては、胃の断面写真により胃壁の厚みをみることのできるバリウム検査の方が優れているとされています。比較的発見が難しいとされるスキルス性胃がんですが、当院では豊富な経験をもつ内視鏡専門医と、最先端の内視鏡機器を用いた検査により、バリウム検査以上に早期発見ができるよう努めています。
安心して胃カメラ検査をご選択ください。胃がんは初期症状がないことが多いため、早期発見のためには、定期的に検査を受ける必要があります。

MEDICAL胃がんの治療

胃がんの治療は、がんの深さ、浸潤の程度、転移の有無などの進行度合いや年齢、体調、ライフスタイルに応じて患者様と相談しながら、内視鏡治療や外科手術、抗がん剤治療などから適切な治療方法を選択します。また、必要に応じて専門の高度医療機関をご紹介しています。
胃がんが早期である場合は、内視鏡治療が可能なことが多いです。内視鏡治療では、体への負担が少なく、胃を全部残すことができるため、食事への影響が少なくて済みます。ピロリ菌に感染している場合は、胃がんの治療が落ち着いた時点でピロリ菌の除菌治療を行います。
除菌に成功すると、胃がんの再発率が1/2から1/3に下がるという報告もあります。しかし、再発がゼロになるわけではないので、ピロリ菌の感染の有無に関わらず、治療後は定期的に胃カメラ検査を行い、経過を観察していくことが重要です。当院では、胃がんの治療だけでなく、術後のフォローアップも行っています。

監修医師 安江 千尋

安江 千尋

院長資格

専門医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
指導医
  • 日本消化器内視鏡学会指導医

所属学会

  • 日本内科学会
  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本大腸肛門病学会
  • 日本消化管学会
院長紹介
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